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[2020.11.22] オンライン配信 「ふくしまDAY2 福島を知り、考える集い」
この記事は2021年8月15日に発行された「SoiL vol.1」に寄稿いただいた文章です。

「福島での学びは答えが一つではなかった」。私が現在勤務する灘中学校・高等学校で2016年から毎年実施している福島県が企画する「ふくしま学宿(ホープツーリズム)」に参加したある生徒が発した感想である。私は2018年に生徒引率として初めてこのツアーに参加し、東日本大震災のつめ跡が残る福島県の現実を目の当たりにした。そして、生徒たちにとって、福島は「大きな学び」を与えてくれる場であると確信した。そこで、勤務校の生徒だけでなく他校の高校生にも福島県を訪れ、学ぶ機会を作りたいと考え、2019年夏、兵庫県内の複数校で「ふくしま学宿チームHYOGO」を組織し、福島訪問を実現させた。このチームでは、単に訪問だけで終わらせるのではなく、兵庫県で「ふくしまDAY」というイベントを行うなど「学び」を繋げていく取り組みを行っている。その中で「1/10 Fukushimaをきいてみる」という映画の存在を知り、監督の古波津陽さんや出演者であった木村紀夫さんとの出会いを頂いた。そして2019年秋、台風災害のボランティア活動で福島県を訪れた際、生徒とのツアーでは立ち入ることができなかった「帰還困難区域内」の大熊町を木村紀夫さんにご案内頂いた。その際、木村さんの大熊町での「スタディツアー構想」もお伺いしていた。

しかしながら、2020年、コロナ禍でスタディツアーの実施が困難となり、代替として始まったオンラインによる大熊未来塾。ツアーの試行段階から参加させて頂き、その可能性も強く感じていた。そして、10月には灘高校3年生の授業で木村さんの現地からの生配信授業を行った。授業で実施する福島の学びは、希望者が参加する「ふくしま学宿」と違って生徒たちにどのような印象を与えることができるか心配もあったが、結果的には大成功であった。「自分から遠いと感じていた東日本大震災の被害の現状を知ることができた」「福島を訪れるのは難しいので、このような機会があって良かった」「いつか福島を訪れたいと思った」などの声があがった。

スタディツアーの代替として始まった「オンラインによる大熊未来塾」であったが、遠く離れた関西の地からでも、より多くの方々に「福島を考えるきっかけ」を与える「場」として大きな力があると感じている。私自身、教育現場を中心にこの活動を今後もサポートしていきたいと考えている。一人でも多くの若者に「福島での学び」を届けるために。